眠り姫とゲーム狂の受験日記

小学校の卒業文集に「東大、京大に入る」と書いた娘と、それを鼻で笑った父親の大学入試までの日記。それにつられて、「俺も京大」と言い放った弟の入試も添えて…

父の気持ち

 ちょうど一年前、1月第3週の日曜日、第一志望であった今のガッコの合格発表日でした。今年は、1日遅れの月曜日に発表らしいですが、日曜日にあったおかげでこの目で受験番号を確認することができたのは、ラッキーだったのかもしれません。

 ちょっと鼻につく言い方にはなるかもしれませんが、事前の模試などの結果から、席次の違いはあろうともまず落ちないという感触を得て臨んだ入試でした。が、発表時間と同時に掲げられた掲示板に娘の受験番号があり、そして隣で見ている娘に安どの表情が浮かんだのを確認したときは、少々感動的ではありました。もっとも、小学校時代から勉強の時間は短いし、上昇志向の少なさにはあきれていたから、「よう頑張った」とも「3年間の努力が報われた」とも思いませんでした。ましてや、受験生の親として何もしないに等しい自分に対しての思いもありません。だが、娘が喜んでいる姿を見たというただそれだけで熱くなったのは確かでしょう。

 それから3分ぐらいしてからでしょうか、周りが歓喜の渦に包まれている中、一人の女の子が私の前をダッシュしていきました。きっと、発表時間に合わせてきたつもりが、どこかで時間をロスしたのでしょう。いてもたってもいられず、子供だけは入り口近くで車から降ろし、親は駐車場を探しに行ったというパターンだと見受けました。

 そして、10数秒後、踵を返すがごとく、来た方向にダッシュする女の子。少し先には、父親らしい男性が名前を呼んでいましたが、目もくれずに走り続けます。もう一度、名前を呼ぶ父親。同時に「どうやった」くらい聞いたのかもしれません。やっと気づいた女の子、走るスピードを少々ゆるめて「なかったんよ」と叫び、またダッシュで入口を出ていきました。しばし、呆然とする父親。が、我に反って娘を追いかけていきました。

 入試ですから、競争率が低くても必ず落ちる子も出てきます。それは、頭では分かっていても、いざ、その光景を目の当たりにするとつらいものがありました。中学受験は確かに子供たちにとっても試練です。特に落ちた場合、もしくは希望の学校に行けなかった場合、傷つくのは子供たちでしょうが、それを受け入れる親も相応の覚悟がいるのでしょう。そんな覚悟もないままに合格発表に臨んだ私。同じ娘を持つ父として、ダッシュした女の子よりも、お父さんの方が気になりました。私、その立場になったとして、娘にかけるべき言葉はいまだに見つかりません。